インタビュー&コラム
INTERVIEW

「自分の幸せの水準を見つけるための、本気の仕事」CFOインタビュー


ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の研究開発を行い、エネルギー・環境事業やヘルスケア事業等を展開し、社会に新しい価値を生み出し社会課題の解決を目指している株式会社ユーグレナ。今回は、取締役副社長 COO 永田暁彦氏にお話を伺いました。

― 永田さんは慶応の商学部ご出身ですが、財務会計への興味はこの頃からあったのですか?

最初からあったわけではなかったですね。大学は慶応1本で受けましたし、数学しか出来なかったので商学部にしたんです。両親の負担も少なくしたかったので、奨学金制度も利用しました。でも入学式でサークルの勧誘を見て、イメージしていた大学生活となんかちょっと違うなと感じたんですよね。

結果、休学して1年生を3回やりました。両親からさすがに卒業してくれと言われて復学し、そのときに、この経歴ではどこにも就職出来ないかもしれないと思い、手に職をつけたくて、ダブルスクールで会計士の学校に通いました。そこで初めて会計に触れましたね。

― そのとき会計士試験の勉強をしてみて「これだ」という感覚はあったのでしょうか。

そこまでは思ってなかったです。九州の田舎から出て来たので、当時は本当に何も知りませんでした。大学を卒業して入ったプライベートファンドの株式会社インスパイアの社長だった成毛さんは日本マイクロソフトの代表だった方なのですが、私はマイクロソフトを知らなかったんですよ。

知らないことが多いというのは、今もそうです。私はいま、COOとしてファイナンスからフロント、売り上げもチームも全事業を見ていますが、詳しいのではなく、全部知らない前提でいるので、都度自分の合理性と感覚で判断し続けてます。

― 珍しいタイプですね。自分のやりたくないことが明確ではあるけど、やることはある種何でも良いんですね。自分の評価や人からの見られ方とかは考えたことないですか?

目的のために成果を出したいとは思いますが、それは私がメインでなくても構わないです。野球で言えば、自分の投げる球は速くなくていいし、自分が打てなくてもいいですけど、チームは勝つ。そういう経営者でありたいです。

今、私は1年契約の取締役なので次の株主総会でクビになるかもしれない。もしそうなったら次やることは経営陣じゃなくても良いと思ってます。

自分のやりたいことにこだわり過ぎる必要はないんじゃないかなと思います。実は、慶応に入らなかったらボクサーになろうと思っていたくらい、それくらいこだわりがないです。

「専門性がない」という悩みは不毛

― そういうお考えを若手に向けてアドバイスすることもあるんですか?

アドバイスではないですが、社内の若手と話すことも学生さんと話すこともあります。みんな口々に「自分に専門性がないのが悩み」って言うのですが、専門性って何だろう?と思います。

(筆者も)元々ずっとライターさんなんですか?

― いえ、今はこのお仕事をさせていただいていますが別の仕事も同時にしていますし、過去は全く別の仕事を複数して来ました。

そうですよね。何でもやってみれば出来るんじゃないかなという意味で伺ったのですが、ユーグレナの社内報を作っているチームも、取材して記事を書いてエディションしてということをしています。そのスキルは稟議書を書くことにも、プレゼン資料を作ることにも使えると思っています。

― たしかに。文字を書く媒体や対象が違ったとしても、それまでに踏む準備は共通するものがありますね。そう言われたら、本当にそれを応用して何でも出来そうな気がしてきます。

キャリアについてのインタビューや質問を受けることがあるのですが、特に学生さんには「今の階段を踏み外したら終わり」みたいなのは無いよ、と伝えています。もし明日クビになっても、仕事は他にもありますから。

世の中は諸行無常だと思っていて、明日会社が潰れるかもしれないし明日クビになるかもしれない。仕事がなくならないために専門性を身に着けようという精神ではなく、どっちに振れても不幸じゃないと思える状態でいようという気持ちのほうが私は強いです。

クビになってもやり切る、クビになっても良いって思えていると、都合よりもやるべきことをやることができるので、だから、社会課題を解決に挑んでいる今のユーグレナの仕事に本気になれるんです。

そうなる影響を与えたのは、自分の両親の生き方かもしれません。お金がたくさんあるわけでもないのに、いつも楽しそうで今でも手をつないで歩くくらい仲が良いんですよ。こういう幸せの価値観は両親から学んだところが大きいです。私自身も今とても幸せだと言えます。