インタビュー&コラム
INTERVIEW

IPO 2020年総括と今後の展望


執筆:宝印刷株式会社 常務執行役員/企業成長支援部長 大村 法生氏

はじめに

2020年の日本の株式市場は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により大幅に下落する局面があったものの、財政と金融政策に支えられ、日経平均は29年ぶりに2万7000円を超えました。

IPOについても、緊急事態宣言下で一時ストップしたものの、6月から再開し、結果的にリーマンショック以降では最多の件数となりました。

2021年は、コロナ禍の克服が達成できるか、東京オリンピック・パラリンピックが実施されるのか等、様々な不安定要因が残っていますし、2022年4月に予定されている東証の市場区分の見直しの影響がどうなるかも注目されます。

以下9つの注目点で、2020年のIPOの状況を確認し、2021年以降の展望を記したいと思います。

1.年間93社と前年比7社増加(コロナ禍の上場中止を乗り越える)

2020年のIPO社数は93社(2019年は86社)。

ここ数年90社前後で推移していますが、コロナ禍で上場承認後に18社も中止になったことを考えると、かなり健闘したと言えるのではないかと思います。2021年も現時点では同水準のIPO社数ではないかと予想しています。

市場別の内訳は、東証一部6社、東証二部9社、マザーズ63社、ジャスダック14社、名証セントレックス1社で、福証、札証にはIPOがありませんでした

2.主幹事証券の競争状況

主幹事件数は、野村證券が22社で首位となりました(トップレフト証券のみをカウント)。

みずほ証券が21社で僅差の2位ですが、マザーズ上場件数では最も多く(16社)なりました。2021年もこの2社と、SMBC日興証券、大和証券、更にはSBI証券も加わり、激しいリーグテーブル争いをするものと見込んでいます。

3.主幹事証券の競争状況

監査法人では、EY新日本が昨年同様に首位(27社)となりました。

2位あずさ(22社)で、3位に太陽(11社)が食い込みました。昨年2位だったトーマツが4位(10社)となり半減(2019年は21社)したように、大手法人の占めるシェアは下がっていくことが見込まれます。 IPOが年間1社の監査法人が9法人もあり、多様化が指摘されています。



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